この記事では、Microsoft Fabric の Fabric IQ を利用開始するための前提条件と設定方法を解説します。
Fabric IQ は Ontology(オントロジー)によりビジネスエンティティ・関係性を定義し、Fabric データと結びつけることで自然言語分析や推論を可能にする新しいインテリジェンス機能です。
情報科学・コンピュータサイエンスにおいて Ontology とは、
ある対象領域(ドメイン)に存在する概念・実体・属性・関係性を、明示的かつ形式的に定義した知識モデル
を指します。
この定義は Tom Gruber によるものが最も広く引用されています。
目次
わかりやすく言うと
- 「この世界(会社・業務・システム)には、何が存在していて」
- 「それらはどんな意味を持ち」
- 「互いにどう関係しているのか」
を 人と機械の両方が理解できる形で言語化した設計図 です。
主な構成要素
一般的なオントロジーは、以下の要素で構成されます。
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| クラス(Class) | 概念・カテゴリ(例:顧客、製品、注文) |
| 個体(Individual) | クラスの具体例(例:顧客A、注文#123) |
| 属性(Property) | 特性・項目(例:価格、日付、ステータス) |
| 関係(Relationship) | 概念同士の関係(例:顧客「が行う」注文) |
これは データモデルより上位の「意味のレイヤー」 とされ、DB スキーマよりも抽象度が高いのが特徴です。
何のために使うのか
- データやシステム間の 意味のズレをなくす
- 異なるシステム間の 相互運用性(Interoperability)
- AI・検索・推論が 意味を理解できるようにする
特に Semantic Web、Knowledge Graph、AI 分野で重要です。
Microsoft Fabric での Ontology の意味
Fabric における位置づけ
Microsoft Fabric では、Ontology は Fabric IQ の中核コンポーネントとして登場します。
Fabric に蓄積されたデータを「ビジネスの意味」に変換するための共有モデル
という位置づけです。
Microsoft Learn における定義
Microsoft Learn では、Fabric の Ontology を次のように扱っています。
- ビジネスエンティティ(例:顧客・注文)
- エンティティ間の関係
- それらと OneLake / Semantic Model のデータの紐付け
を定義する Ontology アイテム です。
Fabric Ontology の特徴(一般的なオントロジーとの違い)
① Power BI セマンティックモデルから生成できる
Fabric では、既存の Power BI セマンティックモデルから自動生成できます。
テーブル → エンティティ
列 → プロパティ
リレーション → 関係
② OneLake と直接バインドされる
Ontology は 概念モデルで終わらず、
- OneLake 上の実データ
- 時系列データ
- リレーションデータ
と 実体ベースで結び付きます。
③ AI(エージェント)のための意味基盤
Fabric IQ では Ontology は
- データエージェント
- 自律的オペレーションエージェント
- 自然言語クエリ
の 前提となる意味レイヤー です。
Microsoft はこれを「Semantic Intelligence」と呼んでいます。
Microsoft が言う「Ontology」とは何か(要約)
Microsoft Fabric における Ontology は、
人・業務・データ・AI が共通理解を持つための「生きた業務モデル」
です。
従来のデータモデリングよりも、
- 業務概念寄り
- AI フレンドリー
- Graph / 推論前提
という点が強調されています。
一般的な Ontology と Microsoft Fabric Ontology の対比
| 観点 | 一般的な Ontology | Microsoft Fabric Ontology |
|---|---|---|
| 主目的 | 知識の形式化 | ビジネス意味の共有 |
| 主対象 | 概念・知識 | 業務・データ・AI |
| データ接続 | 抽象的 | OneLake と実体接続 |
| 利用者 | 研究者・エンジニア | 業務担当者 + AI |
| 管理 | 専門的 | ノーコード / 管理可能 |
まとめ(重要ポイント)
- Ontology は「意味の設計図」
- Fabric では「AI と業務をつなぐ共通言語」
- Semantic Model → Ontology → AI Agent という進化
- Microsoft 上の Ontology は Fabric IQ の基盤
という理解が最も良いと思います。
一般的な Ontology と Microsoft Fabric Ontology の対比
| 観点 | 一般的な Ontology | Microsoft Fabric Ontology |
|---|---|---|
| 主目的 | 知識の形式化 | ビジネス意味の共有 |
| 主対象 | 概念・知識 | 業務・データ・AI |
| データ接続 | 抽象的 | OneLake と実体接続 |
| 利用者 | 研究者・エンジニア | 業務担当者 + AI |
| 管理 | 専門的 | ノーコード / 管理可能 |
4️⃣ まとめ(重要ポイント)
- Ontology は「意味の設計図」
- Fabric では「AI と業務をつなぐ共通言語」
- Semantic Model → Ontology → AI Agent という進化
- Microsoft Learn 上の Ontology は Fabric IQ の基盤
という理解が最も正確です。
その他参考情報
- Ontology (information science) – Wikipedia
- Ontology in Information Science: Structuring Knowledge for the Web – LIS (Library & Information Science) Academy
- Microsoft Fabric IQ adds ‘semantic intelligence’ layer to Fabric | InfoWorld
- Tutorial: Create an ontology – Microsoft Fabric | Microsoft Learn
- fabric-docs/docs/iq/ontology/concepts-generate.md at main · MicrosoftDocs/fabric-docs · GitHub
- Definition of Ontology | What is an Ontology | Encyclopedia of Database Systems
Fabric IQ とは
Fabric IQ は、Microsoft Fabric 上で ビジネスデータの意味的な構造化 を可能にするインテリジェンス層です。Ontology を作成することで、従来の「売上」「顧客」といった数値の集合を、意味を持つビジネスエンティティとして扱うことができ、自然言語での質問や高度な推論が可能になります。
参考リンク
- Fabric IQdocumentation – Microsoft Learn
- Fabric IQ のドキュメント – Microsoft Learn 日本語
- 参考記事(背景理解用): Fabric IQ: The Semantic Foundation for Enterprise AI | Microsoft Fabric Blog, Understanding Work IQ, Fabric IQ, and Foundry IQ
利用前の前提条件チェックリスト
Fabric IQ を利用するためには、以下の条件を満たしている必要があります。
- Microsoft Fabric 容量が有効
Fabric 環境が有効化され、F SKU(または Premium 容量)が割り当てられていること。 - Ontology を作成できる権限
Workspace 作成権限、および Ontology アイテム作成権限が必要。 - Fabric のリソースが起動中
Azure ポータルで Fabric のリソースが起動している。 - データソースの準備
Semantic Model または Lakehouse / Eventhouse 上にデータが必要。 - データアクセス権(RLS など)
利用者が参照できるデータのみが IQ に反映されます。 - (推奨)Purview ラベルや DLP の整備
機密データを扱う組織では設定が推奨。
テナント側の設定手順(Admin portal)
設定を行っていきます。
管理ポータルを開く
- Fabric 管理者アカウントでログインし、 Admin portal を開きます。

Copilot と AI 機能を有効化
- 「Tenant settings」→「Copilot と AI 機能」を ON にします。
- 対象ユーザー範囲は「全組織」または「特定のグループ」。

Fabric IQ を有効化
- 同じく「Fabric IQ」を ON に設定し、利用対象のユーザーを定義します。

有効化したらブラウザを再読込しましょう。ただしこの反映には時間がかかる場合があります。

Ontology の作成手順(Fabric IQ の基盤)
Ontology アイテムを作成
- Fabric ワークスペースで Ontology を新規作成します。
検索して選択します。

エンティティを定義
ついにやってきました。意味をAIに説明するイメージでこれからデータを説明していきます。その単位をエンティティ型と呼びます。
これは脳で言うネットワークのイメージで、ノードとノードをつなげて意味の地図を作成していきます。
Fabric IQ では地図全体をエンティティ、ノードをエンティティ型、つながりをリレーションシップといいます。これを Fabric Data Agent がデータを見に行くときの助けになります。
- 例:Customer、Order、Product、SalesEvent など
- 各エンティティに属性を追加します。
よくあるエラー
エラー メッセージ: オントロジー (プレビュー) の作成中に予期しないエラーが発生しました。ページを更新し、もう一度お試しください。
エラー コード: OneLakeCreateNotificationFailedError
requestid: “xxxxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxxxxxxxxxxx”
このようなエラーメッセージが出た場合は、前提条件を確認してください。よくあるのは Fabric のリソースが起動していないことです。
ちなみに、エンティティやエンティティ型は英語にする必要があります。

関係性 (リレーションシップ) を定義
エンティティ間の関連性を
- 例:Customer — places → Order
- 例:Order — contains → Product
データをバインド
- Semantic Model や Lakehouse のテーブルをエンティティに紐づけます。
Semantic Model の設定
Fabric IQ を利用するには、Semantic Model 側でも設定が必要です。
Semantic Model を開く
Fabric 上で対象の Semantic Model を開きます。
Copilot / AI 設定を有効化
- 設定(Settings)→「Copilot / AI」
- Allow Fabric IQ を ON にします。
モデル品質の確認
- 正規化された日付テーブルの利用
- 適切な関係方向
- 明確なメジャー名
など、モデル品質が高いほど IQ の回答精度が向上します。
レポートでの Fabric IQ 利用手順
IQ Visual を挿入
レポート編集画面で「Fabric IQ」Visual を選択し、キャンバスに配置します。
モデルを選択
使用する Semantic Model を選びます。
自然言語で質問
例:
- 「2024 年の売上前年比を教えて」
- 「地域別の売上トップ 5 を棒グラフで表示して」
Fabric IQ が Ontology と Semantic Model をもとに、最適な可視化や回答を生成します。
セキュリティ・ガバナンスのポイント
- RLS(行レベルセキュリティ)
見えるデータはユーザー権限に依存します。 - Purview の Sensitivity Label
ラベルは可視化にも継承されます。 - DLP(データ損失防止)
組織のデータ管理方針に沿って有効化可能です。 - 監査ログ
Fabric の操作やアクセスは監査対象になります。
よくあるつまずきポイント
- Fabric IQ がメニューに出てこない
→ テナント設定の Copilot / AI / Fabric IQ の ON を再確認。 - 結果が期待と違う
→ Ontology の設計・バインドが正しいかを見直す。 - 権限エラー
→ ワークスペース権限、RLS、データアクセスの見直し。 - パフォーマンス問題
→ Semantic Model の最適化(不要列削除、関係性整理、Direct Lake の活用)を検討。
まとめ
Fabric IQ は Ontology を中心とした新しいインテリジェンス層で、Fabric データを意味的に扱えるようになる強力な機能です。
利用にはテナント設定、Ontology 作成、Semantic Model の設定が必要ですが、これらが整うと自然言語の問合せから高精度な推論が可能になります。導入初期は Microsoft Learn のガイドを参照しつつ、Ontology を小さく作って動作を確認するのがおすすめです。
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