毎年払っている SaaS の利用料や、外部に委託しているシステムの保守費。それを、自分たちで作ったアプリに置き換えて減らす。私はこれを 「SaaS 製造」 と呼んでいます。
ユースケースとインパクトのロングテールでいうと、一番左の「数は少ないけれど、1 件で大きな効果を出せる」領域です。
GitHub Copilot・Cowork・Copilot Studio・Agent Builder の使い分け ― ユースケース × インパクトのロングテールで考える「どれを使えばいいのか」は、ユースケースの数とインパクトのロングテールで考えると整理できます。少数で大きな効果を出す GitHub Copilot と Code Apps、個人の仕事を任せる Cowork、組織で共有する Copilot Studio、少量多品種の Agent Builder。判断の分かれ目をまとめます。
この記事では、SaaS 製造をなぜ Power Apps の Code Apps でやるのか、そしてコストをどう試算するのかを、グラフと具体的な例で紹介します。
- SaaS 製造とは何か、なぜ今できるようになったのか
- 同心円で見る、対象にするシステムとしないシステム
- GitHub Copilot で作ったアプリの「置き場所」の問題と、Code Apps が面倒を見てくれること
- 最近の Web の侵害の例と、Code Apps で小さくなるリスク
- コストの試算の考え方と、4 つのユースケース・CRM での試算例
- KPI の優先順位と、経営に説明するプロトタイプからの始め方
結論
4 つの業務アプリを Code Apps で作り直す例では、年間の総費用が 3,700 万円から 1,130 万円に下がり、3 年で約 6,800 万円の効果が出ます。Power Apps Premium は 1 人で何個のアプリを使っても同じ料金なので、1 つ目のアプリで買ったライセンスが、2 つ目以降のアプリの土台になります。
SaaS 製造とは
SaaS 製造は、外から買っているサービスや、外に頼んで作ってもらったシステムを、社内で作って、社内で持つことです。
たとえば、こんなものが対象になります。
- 社内ポータルや、業務の進み具合を管理するサービス(ユーザー数で毎年払っている)
- 問い合わせや依頼の受付システム(保守と小さな改修を外部に委託している)
- 営業日報や商談の管理(SaaS の一部の機能しか使っていない)
- 会議室や備品の予約(Excel とメールの手作業で回している)
メモ
この記事で紹介するユースケースと金額は、考え方を説明するための例です。どのシステムが対象になるか、どれだけ下がるかは、会社によって違います。自社の契約と見積もりの数字に置き換えて試算してください。
これまでは「作るのは大変」「作っても保守できない」と、買う・委託するが当たり前でした。それが変わったのは、GitHub Copilot で、仕様を伝えればアプリのコードを作れるようになったからです。自社の開発標準に沿って AI に作らせれば、品質もそろえられます。
AI ファースト開発標準で始める Code Apps 開発 ― 外注費の削減を内製で実現する手法(2026 年 10 月版)GitHub で公開している AI ファースト開発標準を、2026 年 10 月の内容で解説します。「クイックスタートして」から始める開発の流れ、27 のスキルと 20 の業務サンプル、管理者と開発者の準備、AI CoE が自社の標準として持つ方法を、外注費の削減・Code Apps とのつながりとあわせて図で紹介します。
どのシステムを対象にするか
社内のシステムを、同心円で 4 つに分けて考えます。SaaS 製造の対象にするのは、外から 2 つ目の「業務システム」です。
| 層 | 例 | SaaS 製造 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 基幹系システム(中心) | 会計、給与、固定資産、生産管理 | 対象外 | 複雑で、ほかのシステムとのつながりも多い。監査の対象 |
| 法令対応システム | 法令の届け出、帳簿や記録の保管 | 対象外 | 監査の対象。法令の変更への追随も要る |
| 業務システム | 社内ポータル、問い合わせの受付、CRM、日報、予約 | 対象 | 組織で使っていて、費用が見えやすい。作り直しやすい |
| システムになっていない仕事(一番外) | 個人の調べもの、資料づくり、メールの整理 | 対象外 | アプリを作るのはもったいない |
一番外の個人の生産性は、アプリを作らずに、すべて Cowork に任せられます。また、どの層の仕事でも、作る前に「そもそも Cowork でできないか」を一度確かめましょう。作らずに済むのが、いちばん安上がりです。
Copilot Cowork のコストは賄えるのか ― Power Platform の環境整備より先に Cowork を開放すべき理由「従量課金を社員にオンにすると高くつく」は本当でしょうか。Copilot Studio をエンドユーザーに開放するための環境整備の時間と費用と比べると、Cowork はコスト管理だけで始められ、学習コストも小さいです。100 人で試して予算を出し、段階的に広げる進め方をまとめます。
GitHub Copilot で作れる。では、どこで動かす?
GitHub Copilot を使えば、React などで思いどおりの画面を、短い時間で作れます。ところが、作ったあとに困るのが「どこで動かすか」です。
自分でサーバーやクラウドに置くと、アプリの外側にやることがたくさん出てきます。
| 自分で用意するもの | 中身 |
|---|---|
| 動かす場所 | サーバーやクラウドのサービスの契約、構築、費用の申請 |
| ログイン | 社員のアカウントでのサインイン、権限の設計 |
| データへの接続 | API のキーやパスワードの保管、接続先ごとの認証 |
| 守り | 脆弱性の修正、WAF、証明書の更新、侵入の監視 |
| 運用 | 監視、バックアップ、障害の対応、本番と開発の分け方 |
多くの会社では、ここで情報システム部門やセキュリティの審査に止められます。作るのは数日でも、出すまでに数か月ということも珍しくありません。
Code Apps は、インフラの面倒を見てくれる
Code Apps は、VS Code などでコードで作った Web アプリを、Power Platform の上で動かせる仕組みです1。React や Vue など、好きなフレームワークで作れます。
アプリの外側は、Power Platform が受け持ちます1。
- ログイン:Microsoft Entra ID のサインインと権限。Power Apps のホストが、使う人の認証とアプリの読み込みを受け持ちます2。
- データへの接続:Dataverse や 1,500 以上のコネクタを、JavaScript からそのまま呼べます。接続はプラットフォームが管理するので、アプリに API のキーを持たせません。
- 公開:
pa app pushで、作ったアプリを環境に公開するだけです2。サーバーを用意しません。 - 管理者のルール:共有の制限、条件付きアクセス、データ損失防止(DLP)ポリシー、アプリの検疫、テナントの分離が、そのまま効きます1。
- 運用:アプリの正常性の指標を、Power Platform 管理センターで見られます1。
誰が何を受け持つか:オンプレミス・IaaS・Code Apps
クラウドが出てきたころによく見た、「誰がどこまで受け持つか」の比較を、Code Apps で描いてみます。
| 観点 | オンプレミス | IaaS | Code Apps |
|---|---|---|---|
| インフラ(設備・サーバー・ネットワーク) | 自社 | クラウドベンダー | Microsoft |
| インフラ保守運用(OS・ミドルウェアの更新・バックアップ) | 自社 | 自社 | Microsoft |
| セキュリティ(認証・DLP・脆弱性の修正) | 自社 | 自社 | 共同:基盤は Microsoft、ポリシーの設定は自社 |
| データ(中身・アクセス権) | 自社 | 自社 | 自社 |
| アプリ(画面・ロジック) | 自社 | 自社 | 自社(GitHub Copilot で作る) |
| アプリ運用(公開・ホスティング・監視) | 自社 | 自社 | 共同:ホスティングと正常性の指標は Microsoft、公開と利用者の対応は自社 |
IaaS は、サーバーを買わずに済んでも、OS の更新から上はすべて自社です。Code Apps なら、インフラとその保守運用を、まるごと Microsoft に任せられます。自社に残るのは、アプリそのものと、データ、そしてポリシーの設定です。保守の委託費や、サーバーの管理の手間が、試算で大きく下がる理由はここにあります。
メモ
どの形でも、データの中身と、誰が見てよいかを決めるのは自社です。Code Apps でも、Dataverse のセキュリティ ロールや DLP ポリシーは、自社で決めて設定します。
つまり、GitHub Copilot で柔軟に作り、置き場所と守りは Power Platform に任せるという分担です。情報システム部門がすでに管理している Power Platform の環境なので、審査も通しやすくなります。
最近の Web の侵害から考える
自分で Web アプリを運用するリスクは、年々大きくなっています。最近の例を 2 つ挙げます。
サーバーで動く部品の脆弱性(React2Shell)
2025 年 12 月、React Server Components に、認証なしでサーバー上のコードを実行される脆弱性(CVE-2025-55182、通称 React2Shell、CVSS 10.0)が公開されました3。標準的な手順で作った Next.js のアプリが、そのままで攻撃を受ける状態でした。公開の翌日には攻撃のコードが出回り、クラウドの認証情報を盗む動きも確認されています3。
自分でサーバーを運用していると、こうした修正を公開されたその日に当てる体制が要ります。
開発に使う部品からの侵入(ChainDrop)
2026 年 8 月には、npm の 400 以上のパッケージに、自分で広がるワームが仕込まれました4。インストールするだけで動き、開発者のパソコンや CI から、npm・GitHub・クラウドの認証情報を盗みます。盗んだ権限で、ほかのパッケージにも自分を仕込んで公開し直します4。
Code Apps で小さくなるリスク、残るリスク
Code Apps は、ブラウザで動く画面(SPA)だけを公開する仕組みです2。==自分で運用するアプリのサーバーがありません。==React2Shell のような、サーバー側で動く部品の脆弱性を、自分で追いかける場面が減ります。データへの接続はプラットフォームが受け持つので、API のキーやパスワードを画面のコードに書かずに済みます。
一方、作るときに npm の部品を使うのは同じです。ChainDrop のような攻撃に備えて、開発の環境は次のように守りましょう。
- ロックファイルで部品の版を固定し、公開されたばかりの版はすぐに入れない(npm の
min-release-ageなど)4 - 開発用のアカウントと本番の環境を分け、本番への公開は CI からだけにする
- CI の権限とトークンは必要な分だけにする
メモ
Code Apps の画面のファイルは、インターネットから届く場所に置かれ、IP アドレスでは絞れません。場所で制限したいときは、Microsoft Entra ID の条件付きアクセスを使います1。
コストの試算の考え方
SaaS 製造の効果は、今の年間の総費用と、作り直したあとの年間の総費用を比べ、そこから最初にかかる費用を引いて出します。
| 入れるもの | |
|---|---|
| 今の年間の総費用 | SaaS の契約料、保守費、改修費、手作業の人件費(時間 × 社内の単価) |
| 作り直したあとの年間の総費用 | 社内での保守の人件費、監視と対応、Power Apps Premium、GitHub Copilot(ユースケースで割る)、Dataverse の追加の容量 |
| 最初にかかる費用(初期移行費) | 開発の人件費、教育と並行稼働、予備費(開発と教育の 10%) |
| 3 年の純効果 | 年間の削減額 × 3 年 − 初期移行費 |
試算の前提
| 項目 | 値 | メモ |
|---|---|---|
| Power Apps Premium | 2,998 円/ユーザー/月 | 公式の価格(税別、年払い相当)5。実際の契約の価格があれば、そちらを使う |
| 社内の人件費の単価 | 5,000 円/時間 | 社内の標準の単価に置き換える |
| 評価の期間 | 3 年 | TCO の評価の期間 |
| 予備費の率 | 10% | 開発・教育・並行稼働にかける |
| GitHub Copilot | 68,400 円/年 | 開発者 2 名 × 19 ドル × 150 円/ドル × 12 か月。4 つのユースケースで割る |
Premium は「人」に付く。だから 1 つ目のアプリが土台になる
Power Apps Premium は、ユーザーごとのライセンスです。1 人が何個のアプリを使っても、料金は同じです5。
そこで、最初のアプリは全社で使うものを選びます。そこで買った Premium があれば、2 つ目以降のアプリは、まだ持っていない人の分だけ買い足せば済みます。
買い足す数の計算
新しく買う Premium の数 = 0 と「使う人の数 − すでに Premium を持っている人の数」の大きいほう。重なっている人は、社員番号などの名簿で確かめます。
| 順番 | ユースケース | 使う部門 | 使う人 | すでに Premium | 新しく買う | Premium の年額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 社内ポータル・業務進捗管理 | 複数部門 | 100 | 0 | 100 | 3,597,600 円 |
| 2 | 社内問い合わせ・依頼受付 | コーポレート | 80 | 60 | 20 | 719,520 円 |
| 3 | 営業日報・商談活動管理 | 営業 | 50 | 30 | 20 | 719,520 円 |
| 4 | 会議室・共有備品予約 | 総務 | 120 | 100 | 20 | 719,520 円 |
| 合計 | 350 | 190 | 160 | 5,756,160 円 |
4 つのアプリを延べ 350 人が使いますが、買う Premium は 160 です。190 人分は、すでに持っている Premium で追加の費用なしに使えます。
試算の例:4 つの業務アプリを作り直す
ユースケースごとの費用
| ユースケース | 今の年間の総費用 | 作り直したあと | 年間の削減額 | 初期移行費 | 3 年の純効果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 社内ポータル・業務進捗管理 | 11,000,000 円 | 5,786,700 円 | 5,213,300 円 | 3,410,000 円 | 12,229,900 円 |
| 社内問い合わせ・依頼受付 | 10,950,000 円 | 1,916,620 円 | 9,033,380 円 | 1,980,000 円 | 25,120,140 円 |
| 営業日報・商談活動管理 | 10,600,000 円 | 2,136,620 円 | 8,463,380 円 | 2,310,000 円 | 23,080,140 円 |
| 会議室・共有備品予約 | 4,450,000 円 | 1,456,620 円 | 2,993,380 円 | 1,155,000 円 | 7,825,140 円 |
| 合計 | 37,000,000 円 | 11,296,560 円 | 25,703,440 円 | 8,855,000 円 | 68,255,320 円 |
1 つ目の社内ポータルは、Premium を 100 人分買うので、作り直したあとの費用がいちばん大きくなります。それでも年 521 万円下がります。2 つ目からは Premium の買い足しが少なく、削減額が大きくなります。
ユースケースごとの内訳(クリックで開く)
今の年間の総費用
| ユースケース | 契約料 | 保守費 | 改修費 | 手作業(時間/年) | 手作業の人件費 |
|---|---|---|---|---|---|
| 社内ポータル・業務進捗管理 | 4,000,000 円 | 1,200,000 円 | 800,000 円 | 1,000 | 5,000,000 円 |
| 社内問い合わせ・依頼受付 | 2,400,000 円 | 300,000 円 | 250,000 円 | 1,600 | 8,000,000 円 |
| 営業日報・商談活動管理 | 3,600,000 円 | 600,000 円 | 400,000 円 | 1,200 | 6,000,000 円 |
| 会議室・共有備品予約 | 1,200,000 円 | 150,000 円 | 100,000 円 | 600 | 3,000,000 円 |
作り直したあとの年間の総費用
| ユースケース | 保守(時間/年) | 保守の人件費 | 監視・対応 | GitHub Copilot | Dataverse | Premium |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 社内ポータル・業務進捗管理 | 360 | 1,800,000 円 | 300,000 円 | 17,100 円 | 72,000 円 | 3,597,600 円 |
| 社内問い合わせ・依頼受付 | 200 | 1,000,000 円 | 180,000 円 | 17,100 円 | 0 円 | 719,520 円 |
| 営業日報・商談活動管理 | 240 | 1,200,000 円 | 200,000 円 | 17,100 円 | 0 円 | 719,520 円 |
| 会議室・共有備品予約 | 120 | 600,000 円 | 120,000 円 | 17,100 円 | 0 円 | 719,520 円 |
初期移行費
| ユースケース | 開発(時間) | 開発費 | 教育・並行稼働 | 予備費(10%) | 初期移行費 |
|---|---|---|---|---|---|
| 社内ポータル・業務進捗管理 | 480 | 2,400,000 円 | 700,000 円 | 310,000 円 | 3,410,000 円 |
| 社内問い合わせ・依頼受付 | 280 | 1,400,000 円 | 400,000 円 | 180,000 円 | 1,980,000 円 |
| 営業日報・商談活動管理 | 320 | 1,600,000 円 | 500,000 円 | 210,000 円 | 2,310,000 円 |
| 会議室・共有備品予約 | 160 | 800,000 円 | 250,000 円 | 105,000 円 | 1,155,000 円 |
何が減るのか
いちばん大きいのは、手作業の人件費(2,200 万円)とSaaS の契約料(1,120 万円)です。アプリにすると、転記や集計、問い合わせの振り分けといった手作業がなくなり、SaaS の契約も止められます。
3 年でどう回収するか
初期移行費 885 万円は、年間の削減額 2,570 万円の約 4 か月分です。1 年目のうちに回収でき、3 年で累計 6,826 万円の効果になります。
控えめに見ると
この試算は、アプリにすると手作業がすべてなくなる前提です。実際には、確認や例外の対応が残ります。手作業が半分しか減らないとして計算し直しても、次のとおりです。
| 前提どおり | 手作業が半分残る | |
|---|---|---|
| 年間の削減額 | 25,703,440 円 | 14,703,440 円 |
| 3 年の純効果 | 68,255,320 円 | 35,255,320 円 |
それでも 3 年で 3,500 万円の効果が出ます。経営に出すときは、両方の数字を並べて見せると、議論が早く進みます。
もっと大きな例:CRM を解約して作り直す
もう 1 つ、規模の大きい例です(これも考え方を説明するための例です)。
1 ユーザー月 1 万円の CRM を、1,000 人で使っているとします。払っているのは月 1,000 万円、年 1 億 2,000 万円です。
これを Code Apps で作り直すと、Power Apps Premium は 1,000 人分で月 約 300 万円(年 約 3,600 万円)です5。開発と保守の費用を引く前ですが、月 約 700 万円、年 約 8,400 万円の差があります。
| 今(CRM) | 作り直したあと(Code Apps) | |
|---|---|---|
| ライセンス | 1 万円 × 1,000 人 × 12 か月 = 1 億 2,000 万円/年 | 2,998 円 × 1,000 人 × 12 か月 = 約 3,600 万円/年 |
| 画面と機能 | 製品に合わせて使う | 自分たちが使いやすいように直し続けられる |
| 開発と保守 | 改修は外部に頼む | 社内で作る(人件費は別に見込む) |
しかも、効果はコストだけではありません。
- 使いやすさ:現場の声に合わせて、画面と機能を自分たちで直し続けられます。
- 内製の技術:作って保守する力が、社内に残ります。
- 開発の生産性:開発標準と GitHub Copilot で、2 つ目以降のアプリを速く作れます。
- 人材育成:作る経験そのものが、社内の人材を育てます。
警告
CRM のように多くの人が毎日使うシステムは、データの移行や、ほかのシステムとのつながりの評価が欠かせません。いきなり全部を置き換えず、プロトタイプで確かめてから進めます。
KPI には優先順位を付ける
効果がたくさんあると、全部を KPI にしたくなります。でも、経営に最初に見せるのは外注費の削減です。BS・PL に表れ、議題になるからです。
| 優先 | KPI | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 外注費・SaaS の費用の削減 | お金で示せる。予算と人を確保する根拠になる |
| 2 | 使いやすさ・業務の改善 | 1 で作ったアプリを直し続けて出す |
| 3 | 内製の技術・開発の生産性 | 2 つ目以降のアプリを作る速さで示す |
| 4 | 人材育成 | 作る人が増えたかで示す |
まず 1 で効果を出し、その上に 2〜4 を積みます。この順番を先に決めて、経営に説明しておきましょう。外注費から始める考え方は、こちらの記事にまとめました。
AI CoE の最初の KPI は「外注費の削減」― 現場のユースケースから始めないAI を使った開発で、AI CoE は自社でアプリを作れるようになりました。最初にやるべきことは、現場からユースケースを集めることではありません。外注費を棚卸しし、内製できるものから削減額を経営に見せることです。
経営に説明するためのプロトタイプから始める
いきなり本番のアプリを作る必要はありません。最初にやるのは、経営に説明するためのプロトタイプです。動く画面と試算を並べると、話が一気に具体的になります。
プロトタイプは、GitHub Copilot を用意して、開発標準から始めます。最初から標準に沿って作れば、プロトタイプがそのまま本番の土台になります。
AI ファースト開発標準で始める Code Apps 開発 ― 外注費の削減を内製で実現する手法(2026 年 10 月版)GitHub で公開している AI ファースト開発標準を、2026 年 10 月の内容で解説します。「クイックスタートして」から始める開発の流れ、27 のスキルと 20 の業務サンプル、管理者と開発者の準備、AI CoE が自社の標準として持つ方法を、外注費の削減・Code Apps とのつながりとあわせて図で紹介します。
- 外注費の一覧から、候補を選びます。 同心円の「業務システム」の層で、今の費用が大きく、全社で使うものを選びます。
- GitHub Copilot と開発標準を用意します。 開発用の環境で、標準に沿ってプロトタイプを作ります。
- プロトタイプと試算を並べて、経営に説明します。 外注費の削減額を 1 番目の KPI として示し、副次的な効果は 2 番目以降に置きます。
- 承認されたら、環境を整えて展開します。 開発・テスト・本番の環境を分け、DLP ポリシーを決めます。2 つ目以降のアプリは、足りない人の分だけ Premium を買い足します。
パートナー企業と組むなら
環境やガバナンスの準備がまだのうちは、パートナー企業の環境でプロトタイプを作って見せてもらうと、早く始められます。パートナー企業との組み方(FDE か、内製の支援か)は、こちらの記事にまとめました。
最初は対象にしないもの
同心円の中心の基幹系システム(固定資産・会計・給与など)と、その外の法令対応システムは、最初の展開から分けます。法令、監査、権限、既存のシステムとの連携を、個別に評価してから判断しましょう。
まとめ
- SaaS 製造は、買っている・委託しているシステムを、社内で作って持つことです。GitHub Copilot で作れるようになりました。
- 作ったアプリの置き場所と守りは、Code Apps に任せられます。ログイン、データへの接続、DLP、条件付きアクセスが最初から効きます。
- サーバーを自分で持たないので、React2Shell のようなサーバー側の脆弱性を追いかける場面が減ります。開発で使う npm の部品は、自分たちで守ります。
- Premium は人に付くので、1 つ目は全社で使うアプリにし、2 つ目からは足りない人の分だけ買い足します。
- 対象は同心円の「業務システム」の層です。基幹系と法令対応は外し、個人の生産性は Cowork に任せます。
- 4 つのユースケースの例では、年間 2,570 万円の削減、3 年で約 6,800 万円の効果です(金額は例です)。
- KPI は外注費の削減を 1 番目に置き、使いやすさ・内製の技術・人材育成はその上に積みます。
- 経営に説明するプロトタイプから始めます。GitHub Copilot と開発標準を用意しましょう。
Code Apps のライセンスの考え方は、こちらで確かめられます。
Power Apps ライセンスの選び方ガイド(2026 年版)Power Apps のライセンスは 「どのアプリ種別(キャンバス / モデル駆動 / Code Apps)」 と 「どのデータソースを使うか(SharePoint / Datav…
Power Apps code apps architecture(Microsoft Learn) ↩ ↩ ↩
React2Shell (CVE-2025-55182)(Wiz)、CVE-2025-55182(VulnCheck) ↩ ↩
ChainDrop supply chain compromise: Anatomy of a self-propagating worm(Microsoft Security Blog) ↩ ↩ ↩
Power Apps の価格(Microsoft)。Premium は 2,998 円/ユーザー/月相当(年払い、税別)で試算。実際の契約の価格を優先してください。 ↩ ↩ ↩
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