Code Apps で「SaaS 製造」― 買っているシステムを作り直してコストを下げる試算の考え方

買っている SaaS を、自分たちで作ったアプリに置き換えてコストを下げるイメージ

毎年払っている SaaS の利用料や、外部に委託しているシステムの保守費。それを、自分たちで作ったアプリに置き換えて減らす。私はこれを 「SaaS 製造」 と呼んでいます。

ユースケースとインパクトのロングテールでいうと、一番左の「数は少ないけれど、1 件で大きな効果を出せる」領域です。

GitHub Copilot・Cowork・Copilot Studio・Agent Builder の使い分け ― ユースケース × インパクトのロングテールで考える「どれを使えばいいのか」は、ユースケースの数とインパクトのロングテールで考えると整理できます。少数で大きな効果を出す GitHub Copilot と Code Apps、個人の仕事を任せる Cowork、組織で共有する Copilot Studio、少量多品種の Agent Builder。判断の分かれ目をまとめます。2026.10.27ユースケース × インパクトのロングテールで道具を使い分けるイメージ

この記事では、SaaS 製造をなぜ Power Apps の Code Apps でやるのか、そしてコストをどう試算するのかを、グラフと具体的な例で紹介します。

  • SaaS 製造とは何か、なぜ今できるようになったのか
  • 同心円で見る、対象にするシステムとしないシステム
  • GitHub Copilot で作ったアプリの「置き場所」の問題と、Code Apps が面倒を見てくれること
  • 最近の Web の侵害の例と、Code Apps で小さくなるリスク
  • コストの試算の考え方と、4 つのユースケース・CRM での試算例
  • KPI の優先順位と、経営に説明するプロトタイプからの始め方

結論

4 つの業務アプリを Code Apps で作り直す例では、年間の総費用が 3,700 万円から 1,130 万円に下がり、3 年で約 6,800 万円の効果が出ます。Power Apps Premium は 1 人で何個のアプリを使っても同じ料金なので、1 つ目のアプリで買ったライセンスが、2 つ目以降のアプリの土台になります。

SaaS 製造とは

SaaS 製造は、外から買っているサービスや、外に頼んで作ってもらったシステムを、社内で作って、社内で持つことです。

たとえば、こんなものが対象になります。

  • 社内ポータルや、業務の進み具合を管理するサービス(ユーザー数で毎年払っている)
  • 問い合わせや依頼の受付システム(保守と小さな改修を外部に委託している)
  • 営業日報や商談の管理(SaaS の一部の機能しか使っていない)
  • 会議室や備品の予約(Excel とメールの手作業で回している)

メモ

この記事で紹介するユースケースと金額は、考え方を説明するための例です。どのシステムが対象になるか、どれだけ下がるかは、会社によって違います。自社の契約と見積もりの数字に置き換えて試算してください。

これまでは「作るのは大変」「作っても保守できない」と、買う・委託するが当たり前でした。それが変わったのは、GitHub Copilot で、仕様を伝えればアプリのコードを作れるようになったからです。自社の開発標準に沿って AI に作らせれば、品質もそろえられます。

AI ファースト開発標準で始める Code Apps 開発 ― 外注費の削減を内製で実現する手法(2026 年 10 月版)GitHub で公開している AI ファースト開発標準を、2026 年 10 月の内容で解説します。「クイックスタートして」から始める開発の流れ、27 のスキルと 20 の業務サンプル、管理者と開発者の準備、AI CoE が自社の標準として持つ方法を、外注費の削減・Code Apps とのつながりとあわせて図で紹介します。2026.08.12

どのシステムを対象にするか

社内のシステムを、同心円で 4 つに分けて考えます。SaaS 製造の対象にするのは、外から 2 つ目の「業務システム」です。

SaaS 製造の対象になるシステム 同心円の中心は基幹系システム、その外は法令対応システムで、どちらも監査の観点から対象外。その外の業務システムが SaaS 製造の対象。一番外側の、システムになっていない個人の生産性は、Cowork に任せるので対象外。 基幹系 システム 法令対応システム 業務システム システムになっていない仕事 基幹系システム:対象外 複雑で、監査の対象。会計・給与・固定資産など 法令対応システム:対象外 監査の対象。法令の届け出・記録の保管など 業務システム:対象! 組織で使う。ポータル・受付・CRM・予約など 個人の生産性:対象外 作るのはもったいない。Cowork に任せる
層 例 SaaS 製造 理由
基幹系システム(中心) 会計、給与、固定資産、生産管理 対象外 複雑で、ほかのシステムとのつながりも多い。監査の対象
法令対応システム 法令の届け出、帳簿や記録の保管 対象外 監査の対象。法令の変更への追随も要る
業務システム 社内ポータル、問い合わせの受付、CRM、日報、予約 対象 組織で使っていて、費用が見えやすい。作り直しやすい
システムになっていない仕事(一番外) 個人の調べもの、資料づくり、メールの整理 対象外 アプリを作るのはもったいない

一番外の個人の生産性は、アプリを作らずに、すべて Cowork に任せられます。また、どの層の仕事でも、作る前に「そもそも Cowork でできないか」を一度確かめましょう。作らずに済むのが、いちばん安上がりです。

Copilot Cowork のコストは賄えるのか ― Power Platform の環境整備より先に Cowork を開放すべき理由「従量課金を社員にオンにすると高くつく」は本当でしょうか。Copilot Studio をエンドユーザーに開放するための環境整備の時間と費用と比べると、Cowork はコスト管理だけで始められ、学習コストも小さいです。100 人で試して予算を出し、段階的に広げる進め方をまとめます。2026.10.27Power Platform の環境整備と、すぐに使える Cowork の比較

GitHub Copilot で作れる。では、どこで動かす?

GitHub Copilot を使えば、React などで思いどおりの画面を、短い時間で作れます。ところが、作ったあとに困るのが「どこで動かすか」です。

自分でサーバーやクラウドに置くと、アプリの外側にやることがたくさん出てきます。

自分で用意するもの 中身
動かす場所 サーバーやクラウドのサービスの契約、構築、費用の申請
ログイン 社員のアカウントでのサインイン、権限の設計
データへの接続 API のキーやパスワードの保管、接続先ごとの認証
守り 脆弱性の修正、WAF、証明書の更新、侵入の監視
運用 監視、バックアップ、障害の対応、本番と開発の分け方

多くの会社では、ここで情報システム部門やセキュリティの審査に止められます。作るのは数日でも、出すまでに数か月ということも珍しくありません。

Code Apps は、インフラの面倒を見てくれる

Code Apps は、VS Code などでコードで作った Web アプリを、Power Platform の上で動かせる仕組みです1。React や Vue など、好きなフレームワークで作れます。

アプリの外側は、Power Platform が受け持ちます1。

  • ログイン:Microsoft Entra ID のサインインと権限。Power Apps のホストが、使う人の認証とアプリの読み込みを受け持ちます2。
  • データへの接続:Dataverse や 1,500 以上のコネクタを、JavaScript からそのまま呼べます。接続はプラットフォームが管理するので、アプリに API のキーを持たせません。
  • 公開:pa app push で、作ったアプリを環境に公開するだけです2。サーバーを用意しません。
  • 管理者のルール:共有の制限、条件付きアクセス、データ損失防止(DLP)ポリシー、アプリの検疫、テナントの分離が、そのまま効きます1。
  • 運用:アプリの正常性の指標を、Power Platform 管理センターで見られます1。

誰が何を受け持つか:オンプレミス・IaaS・Code Apps

クラウドが出てきたころによく見た、「誰がどこまで受け持つか」の比較を、Code Apps で描いてみます。

オンプレミス・IaaS・Code Apps で、誰が何を受け持つか オンプレミスはインフラからアプリの運用まで全部が自社。IaaS は設備とサーバーだけがクラウドベンダーで、OS の更新から上は自社。Code Apps はインフラとインフラの保守運用を Microsoft が受け持ち、セキュリティとアプリの運用は Microsoft の基盤の上で自社が設定する共同、自社が持つのはアプリとデータ。 オンプレミス 自社で全部 IaaS サーバーを借りる Code Apps Power Platform(SaaS) アプリ運用 公開・ホスティング・監視 自社 自社 共同(基盤は Microsoft) アプリ 画面・ロジック 自社 自社 自社 データ 中身・アクセス権 自社 自社 自社 セキュリティ 認証・DLP・脆弱性の修正 自社 自社 共同(基盤は Microsoft) インフラ保守運用 OS・ミドルウェアの更新・バックアップ 自社 自社 Microsoft インフラ 設備・サーバー・ネットワーク 自社 クラウドベンダー Microsoft 自社が受け持つ クラウドベンダー(Microsoft)が受け持つ 共同
観点 オンプレミス IaaS Code Apps
インフラ(設備・サーバー・ネットワーク) 自社 クラウドベンダー Microsoft
インフラ保守運用(OS・ミドルウェアの更新・バックアップ) 自社 自社 Microsoft
セキュリティ(認証・DLP・脆弱性の修正) 自社 自社 共同:基盤は Microsoft、ポリシーの設定は自社
データ(中身・アクセス権) 自社 自社 自社
アプリ(画面・ロジック) 自社 自社 自社(GitHub Copilot で作る)
アプリ運用(公開・ホスティング・監視) 自社 自社 共同:ホスティングと正常性の指標は Microsoft、公開と利用者の対応は自社

IaaS は、サーバーを買わずに済んでも、OS の更新から上はすべて自社です。Code Apps なら、インフラとその保守運用を、まるごと Microsoft に任せられます。自社に残るのは、アプリそのものと、データ、そしてポリシーの設定です。保守の委託費や、サーバーの管理の手間が、試算で大きく下がる理由はここにあります。

メモ

どの形でも、データの中身と、誰が見てよいかを決めるのは自社です。Code Apps でも、Dataverse のセキュリティ ロールや DLP ポリシーは、自社で決めて設定します。

つまり、GitHub Copilot で柔軟に作り、置き場所と守りは Power Platform に任せるという分担です。情報システム部門がすでに管理している Power Platform の環境なので、審査も通しやすくなります。

最近の Web の侵害から考える

自分で Web アプリを運用するリスクは、年々大きくなっています。最近の例を 2 つ挙げます。

サーバーで動く部品の脆弱性(React2Shell)

2025 年 12 月、React Server Components に、認証なしでサーバー上のコードを実行される脆弱性(CVE-2025-55182、通称 React2Shell、CVSS 10.0)が公開されました3。標準的な手順で作った Next.js のアプリが、そのままで攻撃を受ける状態でした。公開の翌日には攻撃のコードが出回り、クラウドの認証情報を盗む動きも確認されています3。

自分でサーバーを運用していると、こうした修正を公開されたその日に当てる体制が要ります。

開発に使う部品からの侵入(ChainDrop)

2026 年 8 月には、npm の 400 以上のパッケージに、自分で広がるワームが仕込まれました4。インストールするだけで動き、開発者のパソコンや CI から、npm・GitHub・クラウドの認証情報を盗みます。盗んだ権限で、ほかのパッケージにも自分を仕込んで公開し直します4。

Code Apps で小さくなるリスク、残るリスク

Code Apps は、ブラウザで動く画面(SPA)だけを公開する仕組みです2。==自分で運用するアプリのサーバーがありません。==React2Shell のような、サーバー側で動く部品の脆弱性を、自分で追いかける場面が減ります。データへの接続はプラットフォームが受け持つので、API のキーやパスワードを画面のコードに書かずに済みます。

一方、作るときに npm の部品を使うのは同じです。ChainDrop のような攻撃に備えて、開発の環境は次のように守りましょう。

  • ロックファイルで部品の版を固定し、公開されたばかりの版はすぐに入れない(npm の min-release-age など)4
  • 開発用のアカウントと本番の環境を分け、本番への公開は CI からだけにする
  • CI の権限とトークンは必要な分だけにする

メモ

Code Apps の画面のファイルは、インターネットから届く場所に置かれ、IP アドレスでは絞れません。場所で制限したいときは、Microsoft Entra ID の条件付きアクセスを使います1。

コストの試算の考え方

SaaS 製造の効果は、今の年間の総費用と、作り直したあとの年間の総費用を比べ、そこから最初にかかる費用を引いて出します。

入れるもの
今の年間の総費用 SaaS の契約料、保守費、改修費、手作業の人件費(時間 × 社内の単価)
作り直したあとの年間の総費用 社内での保守の人件費、監視と対応、Power Apps Premium、GitHub Copilot(ユースケースで割る)、Dataverse の追加の容量
最初にかかる費用(初期移行費) 開発の人件費、教育と並行稼働、予備費(開発と教育の 10%)
3 年の純効果 年間の削減額 × 3 年 − 初期移行費

試算の前提

項目 値 メモ
Power Apps Premium 2,998 円/ユーザー/月 公式の価格(税別、年払い相当)5。実際の契約の価格があれば、そちらを使う
社内の人件費の単価 5,000 円/時間 社内の標準の単価に置き換える
評価の期間 3 年 TCO の評価の期間
予備費の率 10% 開発・教育・並行稼働にかける
GitHub Copilot 68,400 円/年 開発者 2 名 × 19 ドル × 150 円/ドル × 12 か月。4 つのユースケースで割る

Premium は「人」に付く。だから 1 つ目のアプリが土台になる

Power Apps Premium は、ユーザーごとのライセンスです。1 人が何個のアプリを使っても、料金は同じです5。

そこで、最初のアプリは全社で使うものを選びます。そこで買った Premium があれば、2 つ目以降のアプリは、まだ持っていない人の分だけ買い足せば済みます。

買い足す数の計算

新しく買う Premium の数 = 0 と「使う人の数 − すでに Premium を持っている人の数」の大きいほう。重なっている人は、社員番号などの名簿で確かめます。

順番 ユースケース 使う部門 使う人 すでに Premium 新しく買う Premium の年額
1 社内ポータル・業務進捗管理 複数部門 100 0 100 3,597,600 円
2 社内問い合わせ・依頼受付 コーポレート 80 60 20 719,520 円
3 営業日報・商談活動管理 営業 50 30 20 719,520 円
4 会議室・共有備品予約 総務 120 100 20 719,520 円
合計 350 190 160 5,756,160 円

4 つのアプリを延べ 350 人が使いますが、買う Premium は 160 です。190 人分は、すでに持っている Premium で追加の費用なしに使えます。

試算の例:4 つの業務アプリを作り直す

ユースケースごとの費用

ユースケースごとの年間の総費用(今と作り直したあと) 社内ポータルは 1,100 万円から 579 万円、問い合わせ受付は 1,095 万円から 192 万円、営業日報は 1,060 万円から 214 万円、会議室予約は 445 万円から 146 万円に下がる。 今の年間の総費用 作り直したあと 0 550万 1,100万 1,100万579万 1,095万192万 1,060万214万 445万146万 社内ポータル 問い合わせ受付 営業日報 会議室予約 年間の総費用(円)
ユースケース 今の年間の総費用 作り直したあと 年間の削減額 初期移行費 3 年の純効果
社内ポータル・業務進捗管理 11,000,000 円 5,786,700 円 5,213,300 円 3,410,000 円 12,229,900 円
社内問い合わせ・依頼受付 10,950,000 円 1,916,620 円 9,033,380 円 1,980,000 円 25,120,140 円
営業日報・商談活動管理 10,600,000 円 2,136,620 円 8,463,380 円 2,310,000 円 23,080,140 円
会議室・共有備品予約 4,450,000 円 1,456,620 円 2,993,380 円 1,155,000 円 7,825,140 円
合計 37,000,000 円 11,296,560 円 25,703,440 円 8,855,000 円 68,255,320 円

1 つ目の社内ポータルは、Premium を 100 人分買うので、作り直したあとの費用がいちばん大きくなります。それでも年 521 万円下がります。2 つ目からは Premium の買い足しが少なく、削減額が大きくなります。

ユースケースごとの内訳(クリックで開く)

今の年間の総費用

ユースケース 契約料 保守費 改修費 手作業(時間/年) 手作業の人件費
社内ポータル・業務進捗管理 4,000,000 円 1,200,000 円 800,000 円 1,000 5,000,000 円
社内問い合わせ・依頼受付 2,400,000 円 300,000 円 250,000 円 1,600 8,000,000 円
営業日報・商談活動管理 3,600,000 円 600,000 円 400,000 円 1,200 6,000,000 円
会議室・共有備品予約 1,200,000 円 150,000 円 100,000 円 600 3,000,000 円

作り直したあとの年間の総費用

ユースケース 保守(時間/年) 保守の人件費 監視・対応 GitHub Copilot Dataverse Premium
社内ポータル・業務進捗管理 360 1,800,000 円 300,000 円 17,100 円 72,000 円 3,597,600 円
社内問い合わせ・依頼受付 200 1,000,000 円 180,000 円 17,100 円 0 円 719,520 円
営業日報・商談活動管理 240 1,200,000 円 200,000 円 17,100 円 0 円 719,520 円
会議室・共有備品予約 120 600,000 円 120,000 円 17,100 円 0 円 719,520 円

初期移行費

ユースケース 開発(時間) 開発費 教育・並行稼働 予備費(10%) 初期移行費
社内ポータル・業務進捗管理 480 2,400,000 円 700,000 円 310,000 円 3,410,000 円
社内問い合わせ・依頼受付 280 1,400,000 円 400,000 円 180,000 円 1,980,000 円
営業日報・商談活動管理 320 1,600,000 円 500,000 円 210,000 円 2,310,000 円
会議室・共有備品予約 160 800,000 円 250,000 円 105,000 円 1,155,000 円

何が減るのか

年間の総費用の内訳(4 つのユースケースの合計) 今は契約料 1,120 万円、保守費 225 万円、改修費 155 万円、手作業の人件費 2,200 万円で合計 3,700 万円。作り直したあとは保守の人件費 460 万円、監視と対応 80 万円、Premium 576 万円、GitHub Copilot と Dataverse 14 万円で合計 1,130 万円。 今 契約料 1,120万 手作業の人件費 2,200万 保守 225万・改修 155万 3,700万 あと 1,130万 保守の人件費 460万 Premium 576万 ほかに 監視・対応 80万、GitHub Copilot と Dataverse 14万

いちばん大きいのは、手作業の人件費(2,200 万円)とSaaS の契約料(1,120 万円)です。アプリにすると、転記や集計、問い合わせの振り分けといった手作業がなくなり、SaaS の契約も止められます。

3 年でどう回収するか

累計の効果(初期移行費を引いたあと) 最初に 885 万円の初期移行費がかかり、1 年目の終わりで累計 1,685 万円、2 年目で 4,255 万円、3 年目で 6,826 万円になる。 0 6,826万 −885万 1,685万 4,255万 6,826万 移行のとき 1 年目 2 年目 3 年目 毎年 2,570万 ずつ増える

初期移行費 885 万円は、年間の削減額 2,570 万円の約 4 か月分です。1 年目のうちに回収でき、3 年で累計 6,826 万円の効果になります。

控えめに見ると

この試算は、アプリにすると手作業がすべてなくなる前提です。実際には、確認や例外の対応が残ります。手作業が半分しか減らないとして計算し直しても、次のとおりです。

前提どおり 手作業が半分残る
年間の削減額 25,703,440 円 14,703,440 円
3 年の純効果 68,255,320 円 35,255,320 円

それでも 3 年で 3,500 万円の効果が出ます。経営に出すときは、両方の数字を並べて見せると、議論が早く進みます。

もっと大きな例:CRM を解約して作り直す

もう 1 つ、規模の大きい例です(これも考え方を説明するための例です)。

1 ユーザー月 1 万円の CRM を、1,000 人で使っているとします。払っているのは月 1,000 万円、年 1 億 2,000 万円です。

これを Code Apps で作り直すと、Power Apps Premium は 1,000 人分で月 約 300 万円(年 約 3,600 万円)です5。開発と保守の費用を引く前ですが、月 約 700 万円、年 約 8,400 万円の差があります。

今(CRM) 作り直したあと(Code Apps)
ライセンス 1 万円 × 1,000 人 × 12 か月 = 1 億 2,000 万円/年 2,998 円 × 1,000 人 × 12 か月 = 約 3,600 万円/年
画面と機能 製品に合わせて使う 自分たちが使いやすいように直し続けられる
開発と保守 改修は外部に頼む 社内で作る(人件費は別に見込む)

しかも、効果はコストだけではありません。

  • 使いやすさ:現場の声に合わせて、画面と機能を自分たちで直し続けられます。
  • 内製の技術:作って保守する力が、社内に残ります。
  • 開発の生産性:開発標準と GitHub Copilot で、2 つ目以降のアプリを速く作れます。
  • 人材育成:作る経験そのものが、社内の人材を育てます。

警告

CRM のように多くの人が毎日使うシステムは、データの移行や、ほかのシステムとのつながりの評価が欠かせません。いきなり全部を置き換えず、プロトタイプで確かめてから進めます。

KPI には優先順位を付ける

効果がたくさんあると、全部を KPI にしたくなります。でも、経営に最初に見せるのは外注費の削減です。BS・PL に表れ、議題になるからです。

優先 KPI 理由
1 外注費・SaaS の費用の削減 お金で示せる。予算と人を確保する根拠になる
2 使いやすさ・業務の改善 1 で作ったアプリを直し続けて出す
3 内製の技術・開発の生産性 2 つ目以降のアプリを作る速さで示す
4 人材育成 作る人が増えたかで示す

まず 1 で効果を出し、その上に 2〜4 を積みます。この順番を先に決めて、経営に説明しておきましょう。外注費から始める考え方は、こちらの記事にまとめました。

AI CoE の最初の KPI は「外注費の削減」― 現場のユースケースから始めないAI を使った開発で、AI CoE は自社でアプリを作れるようになりました。最初にやるべきことは、現場からユースケースを集めることではありません。外注費を棚卸しし、内製できるものから削減額を経営に見せることです。2026.10.27AI CoE が内製で外注費を減らすイメージ

経営に説明するためのプロトタイプから始める

いきなり本番のアプリを作る必要はありません。最初にやるのは、経営に説明するためのプロトタイプです。動く画面と試算を並べると、話が一気に具体的になります。

プロトタイプは、GitHub Copilot を用意して、開発標準から始めます。最初から標準に沿って作れば、プロトタイプがそのまま本番の土台になります。

AI ファースト開発標準で始める Code Apps 開発 ― 外注費の削減を内製で実現する手法(2026 年 10 月版)GitHub で公開している AI ファースト開発標準を、2026 年 10 月の内容で解説します。「クイックスタートして」から始める開発の流れ、27 のスキルと 20 の業務サンプル、管理者と開発者の準備、AI CoE が自社の標準として持つ方法を、外注費の削減・Code Apps とのつながりとあわせて図で紹介します。2026.08.12
  1. 外注費の一覧から、候補を選びます。 同心円の「業務システム」の層で、今の費用が大きく、全社で使うものを選びます。
  2. GitHub Copilot と開発標準を用意します。 開発用の環境で、標準に沿ってプロトタイプを作ります。
  3. プロトタイプと試算を並べて、経営に説明します。 外注費の削減額を 1 番目の KPI として示し、副次的な効果は 2 番目以降に置きます。
  4. 承認されたら、環境を整えて展開します。 開発・テスト・本番の環境を分け、DLP ポリシーを決めます。2 つ目以降のアプリは、足りない人の分だけ Premium を買い足します。

パートナー企業と組むなら

環境やガバナンスの準備がまだのうちは、パートナー企業の環境でプロトタイプを作って見せてもらうと、早く始められます。パートナー企業との組み方(FDE か、内製の支援か)は、こちらの記事にまとめました。

最初は対象にしないもの

同心円の中心の基幹系システム(固定資産・会計・給与など)と、その外の法令対応システムは、最初の展開から分けます。法令、監査、権限、既存のシステムとの連携を、個別に評価してから判断しましょう。

まとめ

  • SaaS 製造は、買っている・委託しているシステムを、社内で作って持つことです。GitHub Copilot で作れるようになりました。
  • 作ったアプリの置き場所と守りは、Code Apps に任せられます。ログイン、データへの接続、DLP、条件付きアクセスが最初から効きます。
  • サーバーを自分で持たないので、React2Shell のようなサーバー側の脆弱性を追いかける場面が減ります。開発で使う npm の部品は、自分たちで守ります。
  • Premium は人に付くので、1 つ目は全社で使うアプリにし、2 つ目からは足りない人の分だけ買い足します。
  • 対象は同心円の「業務システム」の層です。基幹系と法令対応は外し、個人の生産性は Cowork に任せます。
  • 4 つのユースケースの例では、年間 2,570 万円の削減、3 年で約 6,800 万円の効果です(金額は例です)。
  • KPI は外注費の削減を 1 番目に置き、使いやすさ・内製の技術・人材育成はその上に積みます。
  • 経営に説明するプロトタイプから始めます。GitHub Copilot と開発標準を用意しましょう。

Code Apps のライセンスの考え方は、こちらで確かめられます。

Power Apps ライセンスの選び方ガイド(2026 年版)Power Apps のライセンスは 「どのアプリ種別(キャンバス / モデル駆動 / Code Apps)」 と 「どのデータソースを使うか(SharePoint / Datav…2021.03.31

  1. Power Apps code apps overview(Microsoft Learn) ↩ ↩ ↩ ↩ ↩

  2. Power Apps code apps architecture(Microsoft Learn) ↩ ↩ ↩

  3. React2Shell (CVE-2025-55182)(Wiz)、CVE-2025-55182(VulnCheck) ↩ ↩

  4. ChainDrop supply chain compromise: Anatomy of a self-propagating worm(Microsoft Security Blog) ↩ ↩ ↩

  5. Power Apps の価格(Microsoft)。Premium は 2,998 円/ユーザー/月相当(年払い、税別)で試算。実際の契約の価格を優先してください。 ↩ ↩ ↩

スポンサーリンク

メルマガで新しい記事を受け取る

新しい記事や講座のお知らせを、メールでお届けします。いつでも配信を停止できます。

ご登録いただいたアドレスは、メルマガの配信にだけ使います。

あわせて学びたいオンライン講座

どの講座から始めればよいか、学ぶ順番をまとめています。

𝕏inCopilot.md
ギークフジワラのアバター

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です