Copilot Studio の「評価」が本格化 ― AI エージェントは「作る」から「品質を測る」へ

AI エージェントの仕事を、チェックリストで評価しているイメージ

Copilot Studio でエージェントを作るのは、とても簡単になりました。次に問われるのは、そのエージェントは本当に仕事をこなしているのかです。

2026 年 10 月 29〜30 日、Microsoft 365 管理センターのメッセージセンターで、Copilot Studio の評価(Evaluation)の更新がまとめて案内されました。答えの良し悪しだけでなく、仕事を最後までやり遂げたか、正しい道具を正しい入力で使ったかまで測れるようになります。

  • なぜ AI エージェントに「評価」が要るのか
  • 今回の更新(7 つのメッセージ)で何が変わるのか
  • どの採点のしかた(グレーダー)で、何を測るのか
  • 作る → テストする → 評価する → 直す、を回す進め方

なぜエージェントに「評価」が要るのか

エージェントの答えは、毎回少しずつ変わります。指示を 1 行直す、ナレッジを足す、モデルを替える。そのたびに、前は正しく答えていた質問で間違えるかもしれません。

テスト用のチャットで数問試すだけでは、この変化に気づけません。Copilot Studio のエージェント評価は、質問と期待する答えをまとめたテストセットを何度でも流し、合格率で比べられる仕組みです1。

作る・テストする・評価する・直すの流れ エージェントを作り、テストセットで試し、グレーダーで評価し、結果から指示・ナレッジ・ツールを直す。直したら同じテストセットで評価し直し、合格率を前回と比べる。 ① 作る 指示・ナレッジ・ツール ② テストする テストセットを流す ③ 評価する グレーダーで採点 ④ 直す 失敗の理由から改善 同じテストセットで評価し直し、合格率を前回と比べる 評価し直すきっかけ 指示を変えた / ナレッジやツールを足した / モデルが変わった / 定期の確認(毎日・毎週)
エージェントは「作って終わり」ではなく、評価を回し続けて品質を保ちます。

今回の更新:7 つのメッセージ

メッセージセンターで案内された、Copilot Studio の評価の更新です。

メッセージ ID 機能 ひとことで
MC1530742 Task completion grader エージェントが、利用者の求めた結果までやり遂げたかを測る
MC1530748 Tool accuracy grader 期待したツールを、期待した入力で使ったかを測る
MC1531932 Custom Graders Library と Microsoft の既製のグレーダー 自分で作った採点基準を保存して、ほかのエージェントでも使い回す
MC1531924 Generated custom grader エージェントと場面に合わせた採点基準を、Copilot Studio が作ってくれる
MC1531903 Evaluation for automation flows 会話だけでなく、自動化(フロー)も評価できる
MC1532073 Evaluation Viewer role 作る権限が無い人も、評価の結果だけを見られる
MC1532071 Agent status evaluation warnings 評価していない・モデルが変わったエージェントに警告を出す

Copilot Studio の公式ブログ(2026 年 9 月の更新のまとめ)でも、これらが紹介されています2。要点は次のとおりです。

  • Task Completion は、利用者が求めた結果をエージェントが達成したかを確かめます。
  • Tool Accuracy は、期待したツールと入力を選んだかを評価します。
  • Safety は、設定した安全性のしきい値に照らして答えを測ります。応答時間の確認(Latency)も加わります。
  • Custom Graders Library で、カスタムのグレーダーをエージェントやテストセットをまたいで再利用できます。
  • 生成したグレーダーは、テナントごとに作られ、そのテナントの中だけで見えます。
  • 評価は、エージェントの会話だけでなく、自動化の中の AI のノードと自動化全体にも広がります。
  • Evaluation Viewer ロールで、レビューする人や関係者が、作る権限なしで評価の結果を見られます。

提供の時期は、テナントのメッセージセンターで確かめてください

機能ごとに、一般提供とプレビュー、展開の時期が違います。自分のテナントの Microsoft 365 管理センター → メッセージセンターで、上のメッセージ ID を検索すると確かめられます。

何を測るのか:グレーダーの地図

評価で使う採点のしかたを、Copilot Studio ではテスト方法(グレーダー)と呼びます。いま使えるものと今回加わるものを、「何を測るか」で並べると次のようになります。

何を測るか:グレーダーの地図 下から順に、答えの言葉(完全一致・キーワード一致・テキストの類似度)、答えの意味と質(意味の比較・総合的な品質・安全性)、道具の使い方(ツールの使用・Tool accuracy)、仕事の完了(Task completion)。その横に、自社の基準を書くカスタムのグレーダーがあり、ライブラリで再利用し、Copilot Studio に作らせることもできる。 上に行くほど「仕事の成果」に近い 仕事をやり遂げたか Task completion(新) 道具を正しく使ったか ツールの使用 / Tool accuracy(新:入力まで確かめる) 答えの意味と質 意味の比較 / 総合的な品質 / コンテンツの安全性 答えの言葉 完全一致 / キーワード一致 / テキストの類似度 自社の基準 カスタムのグレーダー 評価の指示とラベルで 合格・不合格を決める ライブラリ(新) 保存して使い回す 生成(新) 場面に合わせて Copilot Studio が作る 例:人事の規程に沿うか Microsoft Learn・メッセージセンター・公式ブログをもとに作成

いま使えるテスト方法

Microsoft Learn では、次のテスト方法が案内されています3。

テスト方法 測るもの 結果
総合的な品質(General quality) 関連性・根拠があるか・十分か・答えようとしたか。期待する答えが無くても使える 100 点満点
コンテンツの安全性(Content safety) 憎悪と不公平・性的な内容・暴力・自傷 合格・不合格
意味の比較(Compare meaning) 期待する答えと、意味が合っているか 100 点満点
ツールの使用(Tool use) 期待したツールやトピックを使ったか 合格・不合格
キーワード一致(Keyword match) 決めた言葉が入っているか 合格・不合格
テキストの類似度(Text similarity) 言い回しまで近いか 0〜1 の類似度
完全一致(Exact match) 一字一句同じか。番号やコード向き 合格・不合格
カスタム(Custom) 自分で書いた評価の指示とラベルで判定 ラベルごとの合格・不合格

断るべき質問は「カスタム」で

総合的な品質は「答えようとしたか」も見るので、断るのが正しい質問でも低く出ることがあります。このときは、正しい断り方をラベルにしたカスタムのテスト方法を使います3。

今回加わるもの

  1. Task completion:答えの文章ではなく、利用者が頼んだ仕事が終わったかを見ます。複数の手順を自分で進めるエージェントほど、これが大事になります。
  2. Tool accuracy:「ツールを使ったか」だけでなく、正しいツールを、正しい入力で使ったかを見ます。会話の記録を 1 件ずつ追う手間が減ります。
  3. Custom Graders Library と生成:人事の規程、営業の言い回し、法務の確認など、自社の基準を一度グレーダーにすれば、別のエージェントでも使えます。最初の案は Copilot Studio に作らせられます。

会話だけでなく「自動化」も評価する

エージェントは、フローの中の 1 つの手順(AI のノード)としても動きます。今回、評価は個々の AI のノードと、自動化全体に広がります2。

Microsoft Copilot harness(旧称 GitHub Copilot harness)で作るワークフローでは、エージェントのノードをテスト → 評価 → 改善できます4。

  • テストした結果に対して、グレーダーを作るか選んで評価します。
  • グレーダーごとに、合格・不合格と、その理由が返ります。
  • 不合格のときは、AI が改善の案を出すことがあります。
  • テストの方法は、指示とツールから AI に作らせることもできます(1 つのノードで 5 つまで)。
  • 評価は、1 つのノードで 1 日 20 回までです。

テストセットの評価は、Power Platform の API や Microsoft Copilot Studio のコネクタからも動かせます5。毎朝テストセットを流し、合格率を Power BI に貯めて、下がったら通知する、といった仕組みも作れます。

flowchart LR
  A[毎朝のスケジュール] --> B[Evaluate Agent<br>テストセットを実行]
  B --> C[Get Agent Test Run Details<br>完了を待って結果を取る]
  C --> D[合格率を記録<br>Dataverse・Power BI]
  D --> E{前回より<br>下がった?}
  E -- はい --> F[作った人に通知]
  E -- いいえ --> G[そのまま]

見る人と、気づく仕組み

Evaluation Viewer ロール

品質を確かめるのは、作る人だけではありません。業務の担当者、品質保証のチーム、AI CoE も結果を見たいはずです。Evaluation Viewer ロールは、作る権限を渡さずに、評価の結果だけを見せられる役割です2。

評価していないエージェントへの警告

画面上部の Review には、次のときに警告が出ます6。

  • まだ一度も評価していない。
  • 最後に評価したあとで、エージェントのモデルが変わった。

警告があっても公開は止まりません。ただ、モデルが変わったら評価し直すという習慣を、画面が思い出させてくれます。

進め方:まず 20 問から

  1. 合格の基準を決めます。 業務の担当者と、「この質問にはこう答えてほしい」を 20 問ほど書き出します。テストセットは CSV で取り込めます1。
  2. 測り方を組み合わせます。 まずは総合的な品質と意味の比較。ツールを使うエージェントなら Tool accuracy、仕事を任せるエージェントなら Task completion を足します。
  3. 3 回流して基準の点を取ります。 AI の採点はぶれます。3 回以上流した平均を基準にし、5% くらいの差は誤差と考えます7。
  4. 失敗した理由から直します。 結果には、使ったナレッジ・トピック・ツールと、判定の理由が出ます8。
  5. 変えたら、同じテストセットで流し直します。 結果は 89 日で消えるので、残したいものは CSV に出しておきます8。

評価にも Copilot Credits がかかることがあります

Microsoft Copilot harness で作るエージェントは、作る・テストする・評価するときにも Copilot Credits を使うことがあります6。毎日自動で流すときは、テストセットの数と回数も予算に入れましょう。

Copilot Credits のライセンスガイドを読み解く ― 買い方・価格・消費レート・含まれる範囲(2026 年 10 月版)Microsoft の Copilot Credits ガイドに沿って、4 つの買い方と価格、機能ごとの消費レート、Microsoft 365 Copilot に含まれる範囲、使い切ったときの動き、AI Builder からの移行をまとめます。2026.10.26Copilot Credits が複数の AI のサービスで共通に使われるイメージ

まとめ

  • エージェントの答えは変わります。テストセットで何度も流して、合格率で比べるのが評価です。
  • 今回の更新で、仕事をやり遂げたか(Task completion)、道具を正しく使ったか(Tool accuracy)まで測れるようになります。
  • 自社の基準はカスタムのグレーダーにして、ライブラリで使い回せます。
  • 評価は自動化にも広がり、結果は Evaluation Viewer に見せられます。
  • まず 20 問から。作る → テストする → 評価する → 直す、を回しましょう。

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新しい Copilot Studio でエージェントを作るところから学ぶなら、こちらの講座がおすすめです。

参考

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